JCG予選から見るBO3環境の推移とデッキタイプ考察(DBN編) 前編

1. はじめに

RAGE Summer 2018予選、お疲れ様でした。

狭き門を潜り抜けてファイナリストに名を連ねた8名におかれましては、本当におめでとうございます。名だたる実力者が多く勝ち抜け、今からGRAND FINALSが楽しみになるとともに、「実力者」という認識がユーザー間で共有できるほどには、公式・非公式を問わず競技シーンが重ねられてきたんだなあと、謎の感慨に浸っています(2周年おめでとうございます!)。

 

今回、自分は都合により参加することができませんでしたが、今期は予選前に大幅な能力調整がなかったため、構築やプレイを丁寧に練りこんで臨めたプレイヤーも少なくないのではないでしょうか。

規格外のパワーカードがローテーション落ちしたことや新システムのチョイス実装により、以前よりもプレイングの重要度が増したと言われることが多い今環境ですが、裏を返せば有利・不利を体感しにくいマッチアップが増えてしまったわけで、正確な環境を掴みにくい側面もあったように思います。
加えて4月末の能力調整の影響が小さかったため、各デッキ使用数の分布自体がいつもより長い期間において連続的に変化してきており、デッキタイプ間の正確な相性や最新の環境情勢といった、情報面での理解度に個人差が出やすかったのではないでしょうか。特にプレイ面での経験・ノウハウ次第で相性差が覆りうるマッチアップについては主観と実状がズレやすく、短期的に非常に高い勝率を出すことを目的とした編成が求められるRAGEのような大型大会に臨むにあたり、このあたりの客観視は非常に重要なファクターであったと考えています。

 

そのような背景もあり、今回は予選に出ないことが決まっていた分データの収集と分析に注力したため、久しぶりに環境考察をやろうかなというのがこちらの記事です。
前回書いたのはこちら(https://shadowverse-battle.jp/posts/24219)。名門WLDですね。……今からローテ落ちが待ち遠しい。
前回はシャドバトルに投稿しましたが、今回は間違いなく文字数制限にかかる自信があったので、どうせなら1本で書き切りたいしとこちらに投げる運びとなりました。

アディショナル環境が始まってしまい、このままだと情報鮮度が落ちる一方なので、とりあえず前後編に分けて見切り発車します!

 

記事の構成は大体前回のものを踏襲しつつ、内容はより詳しく掘り下げていきたいと思います。
いずれの論もなるべく根拠となるデータを提示しますが、小難しい数字が並びがちなので適宜読み流してください。今後文字色薄くしているところはその手の小難しい話になりますので、気になるかただけお読みいただければと思います。
また、分析の手続きは正直かなり粗いやり方をしており、ちょいちょいガバさが露呈していますが、ご容赦ください。
前回同様データに関しては記事終わりにて公開していますので、雑さが気になった方は是非ご自身で分析してみてください。

 

2. BO3環境の変遷

さて、気になるBO3環境の推移ですが、捉えるにあたってJCGローテーション大会の予選出場者のデッキリストを集計しました。
集計対象は第8弾カードパック Dawnbreak, Nightedge 実装後からRAGE Summer 2018 東日本予選開催までの期間中に行われた JCG Shadowverse Open ローテーション大会予選トーナメント全21回分、累計10,752本のデッキです。
今回は半自動集計のため、一部の不戦勝やローテ落ちデッキへの適切な処理ができていませんが、母数に対して少数なので、目をつぶっていただければ幸いです(次回投稿する機会があれば、その時までには自動整理できるようにします)。

 

ちなみに、決勝ではなく予選を対象としている理由は大きく2つあります。
まず、デッキタイプの強度を測るにあたって、母集団での使用数・成績を見る必要があるということです。決勝トーナメントでの使用数が多いデッキタイプでも、予選で膨大な数の同型の中から一握りが勝ち上がってきたのか、あるいはそもそも使用者が少なかった中、その多くが予選を抜けてきたのかで評価が異なるということですね。
もう一つの理由はシンプルで、JCGでは予選大会と決勝大会が分かれているためです。決勝進出者は改めてデッキ登録を行う機会があり、予選突破者の使用デッキを見て決勝でのデッキ選択を変えるプレイヤーも決して少なくないので、決勝で初出となるデッキに対して正当な評価をつけることは非常に難しくなります。

 

以上のような理由で予選を集計対象としているわけですが、デッキ公開制というJCGの性質上、RAGEなどの非公開制BO3環境とは若干違いがあるかもしれません。とはいえ、集計結果を見る限りではJCGはRAGEやプロリーグなどの大規模配信への感度が高いフィールドであり、比較的RAGE予選環境に近い部分もあるのではないかと考えています。
まあ身も蓋もない話をすると、JCGでしかBO3のデータが取れないだけなんですが……。

 

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ということで早速見ていきましょう。こちらはJCG予選における主要デッキタイプの使用数推移を示したグラフです。


ここでは使用数の変動が大きい、または使用数そのものが一定以上あるものに限定して掲載しています。しかしながら、使用されていたデッキタイプの種類自体は非常に豊富で、中には使用数こそ少なくとも軽視できないアベレージを出しているものもあり、総じて選択肢が非常に多い環境でした。東日本予選で鮮烈な結果を残した各種ドラゴンデッキはその好例かもしれません。

 

「推移」という側面にフォーカスすると、見てのとおり、5月に入ってからの環境変化が急激です。
例えば、4月中旬頃に有名プレイヤーがリストを公開したことで構築基盤が定着し、じわじわと存在感を醸していた援護射撃ロイヤルですが、プロリーグ開幕戦の影響か、5月に入ってから例をみないほどの勢いで急増を果たし、純ミッドレンジロイヤルは取って代わられる形で数を減らしています。


また、アグロエルフも援護射撃ロイヤルほどではないにせよ、はっきりとした増加傾向を見せており、こちらは4月末にRatings for シャドウバースの前半戦を終えた強豪プレイヤーたちがこぞってリストを公開したことと無関係ではないでしょう。
5/12, 13にはRAGE西日本予選があり、JCG環境でも、ファイナリストの使用していた4タイプ(援護射撃R, アーティファクトNm, ミッドレンジE※, ニュートラルW)の使用率が伸びるなど、影響を受けていそうな様子がうかがえました。

※NineVoice選手のエルフデッキはコンセプト的にはコントロールに分類すべきかもしれませんが、今回デッキ分類に用いたアルゴリズムの都合上、ミッドレンジとして扱っています。

 

とはいえ、基盤が共通しているミッドレンジロイヤルと援護射撃ロイヤルを一括りにするのであれば、流行度という意味でTier1がロイヤル・ネメシスという状態は集計期間を通して揺るがなかったと言えるでしょう。
むしろはっきりと推移があったのはTier2に相当するデッキ群で、当初Tier1と呼んで差し支えない使用率を誇っていたギガキマウィッチや教会ビショップは減少、そしてエルフやニュートラルウィッチは緩やかに増加していきました。エルフに関しては、アグロとミッドレンジの勢力が複数回にわたって入れ替わっており、デッキ非公開の条件下で対面のエルフのデッキタイプを読みたい場面では、悩みの種の一つになっていたかもしれません。
最終的にRAGE東日本予選の直前段階では、Tier2デッキの選択状況にかなり個人差が出る環境だったと捉えることができそうです。

 

3. クラス・デッキタイプごとのパフォーマンス

ここからはクラスごとに、主要デッキタイプの成績や特徴、環境から受ける影響などを見ていきます。

 

まずは各論に入るのに先駆け、この章で用いるスコアという指標について簡単に説明させてください。
ここでいうスコアとは、端的に言えばBO3単位での勝利数に応じてつけられる点数のことで、デッキタイプの評価基準として設けたものです。
具体的には スコア = 2^(勝利数) としています。
以前は同じ目的で、デッキタイプごとの予選突破率を参照していましたが、その場合例えば「突破率は高いが0勝率も高い」「突破率は低いが3勝(予選決勝進出)率は高い」といったケースを見逃しやすく、特にブレ幅が大きいデッキタイプを適切に評価しにくいという欠点がありました。

 

そのため、4勝(予選突破)の成否ではなく勝利数自体を評価する必要がありますが、勝利数をそのまま点数とすることはできません。
なぜならトーナメントという性質上、勝利数が増えるごとに勝ち残っているデッキの数は1/2ずつになっていくわけで、加速度的に減少するからです。
よって勝利数そのものではなく、そこまで勝ち続けている確率をもとにデッキを評価する必要があり、ありていに言えば1勝ごとに数値が2倍になる指標としてスコアを用意しました。

 

上記は一つ一つのリストに付与されるスコアであり、この章では大会ごとに各デッキタイプのリストの平均スコアを取ることで、デッキタイプ間のパフォーマンス比較や環境からの影響分析を行っています。
平均スコアを出す際は、数値の可読性を上げるため、勝率50%のデッキタイプの理論上の平均スコアとの差分を取っています。
すなわち、スコア0で勝率50%相当のパフォーマンスとなり、スコアが高いほど勝率がいいことを示します。


前置きが長くなってしまいましたが、煩雑な説明はここまでにして、クラスを個別に見ていくことにしましょう。

 

3-1. エルフ

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期間を通して、エルフの主要デッキタイプはアグロとミッドレンジの2つでした。
ミッドレンジに関してはコントロールとの境界線をどう引くのかという問題がありますが、いずれもジャングルの守護者、またはキングエレファントのフィニッシャーとしての役割が大きく、採用カードの種類・枚数ともにばらつきが非常に大きかったため、あえて線を引くよりはと一つのデッキタイプとみなしています(環境初期に一時流行したイスラーフィール入りのエルフは一応コントロールとして分類しています)。


近々ではアグロの初速を落として、大魔法の妖精・リラなどボード制圧に長けたカードを採用したテンポエルフ系統のデッキも流行の兆しを見せています。
こうしたデッキも、ここでの分類上はミッドレンジとなってしまうため、ミッドレンジエルフに分類したデッキの構築はばらつきが大きく、分析の精度が甘いのは心苦しい限りです。

 

(1)アグロエルフ(平均スコア : 0.28, 標準偏差 : 0.66)

アグロエルフは4月末から5月上旬にかけて流行し、一時とはいえロイヤル・ネメシスに次ぐ第三勢力となっていました。
アベレージスコアも、実は援護射撃ロイヤルに次ぐ第二位の高さを誇り、ややブレ幅が大きいことに目をつぶれば(標準偏差がデッキスコアのブレ幅を示しています)、総じて高いパフォーマンスを発揮していたと言うことができそうです。

しかし5月中旬からはピーク時の半分近くにまで使用数が落ち込んでいます。もともとプレイが難しいと言われていたところに、RAGE西日本予選におけるフィーチャーマッチで公となった、失着時・事故時の著しいパフォーマンス低下が嫌厭された形でしょうか。同大会でコントロール色の強いエルフが勝ちきったことを含め、厳しいフィールドになると予想したプレイヤーのアグロエルフ離れも原因の一端かもしれません。

 

a) 環境の影響

では、アグロエルフが結果を出しやすい環境・出しにくい環境とはどのようなものでしょうか。

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こちらは統計手法を用いて、アグロエルフの平均スコアに影響を与えている可能性が高いデッキタイプを抽出した表になります(アグロエルフの母数がある4/8以降の大会17回が分析対象)。詳しい見方は割愛しますので、自分で読み解きたい!というかたは「重回帰分析 エクセル 見方」あたりでググってみてください。そこまで難しくはないと思います。

統計畑の人向けに表の概要を説明しておくと、アグロエルフの1大会ごとの平均スコアを目的変数、他各種デッキタイプの1大会ごとの使用数を説明変数とした重回帰分析の結果となっています。変数選択は減少法で行っています(以下同様)。

大事なのは「係数」の値で、その行のデッキタイプ使用数が増加した際、アグロエルフのスコアがどう変動する傾向にあるかを示しています。

この表でいえば、ロイヤル・教会ビショップ・ニュートラルウィッチの使用数が多い大会ではアグロエルフは結果を出しづらく、中でも教会ビショップの使用数に影響されやすいということになります。なお、「ロイヤル」は今回の分類におけるミッドレンジロイヤルと援護射撃ロイヤルの使用数の和を取っています。ここで2点、注意が必要です。

 

1つはこの表がデッキタイプ間の相性を表しているとは限らないということです。

表が示すのはあくまで「Aの使用数が増えるとBの成績が落ちる(上がる)」という関係性であり、直接対決の勝敗以外にも相方の選択や、「仮想敵のCをAと取り合ってしまい上位にメタ対象がいなくなる」といった一時的・間接的な環境の動きなどの影響もすべてひっくるめています。

もちろんマッチアップの相性も少なからず反映されているはずなので、大事なのは表に現れたデッキタイプとの関係性をどう読み解くかということになります。

 

もう1点は係数の符号がマイナスばかり、あるいはプラスばかりだからといって、必ずしも分析対象のデッキタイプが弱い(強い)わけではないということです。

「Aの使用数が増えるとBの成績が落ちる」とは「Aの使用数が減るとBの成績が上がる」と同義であり、さらには基準となるスコアの値もデッキごとに異なります。特定のデッキの使用数に応じて、スコアが100から下がっていくデッキと、0から上がっていくデッキではどちらのほうが強いとは一概に決めることができないように、係数の符号を見るだけではそのデッキの強さを測ることはできません。

 

上記2点を踏まえ、アグロエルフについてはどう解釈するのがいいでしょうか。

ロイヤル・教会ビショップ・ニュートラルウィッチの使用数と負の相関関係にある(係数がマイナス)わけですが、いずれも守護や回復のカードが無理なく入るデッキタイプであり、確かにアグロエルフが苦戦しそうな相手と言えるでしょう。

ニュートラルウィッチについては意見が分かれそうですが、少なくともJCG予選レベルにおいては、呼び覚まされし禁忌によるAoEやサイズの大きい守護などが、アグロエルフの攻勢を押さえるつける展開のほうが多かったのだと捉えられそうです。

ちなみに、この表に現れていないデッキタイプとの間には、信頼できるほどはっきりとした関係性が出ておらず、アグロエルフの成績に顕著に影響を与えたデッキタイプが上記3種類ということになります。アーティファクトネメシスの影響がはっきりと出ていない(統計的な信憑性がない)のは正直意外ですが、スターリーエルフの枚数を減らしている構築が少なくない点や、主要デッキタイプの組合せの中にアーティファクトネメシス2タテを狙いやすい編成がほぼ存在しない(後述) = 「あるデッキがアーティファクトネメシスに有利であること」の相対的価値が低い点などが原因としてあるのかもしれません。

 

以上を踏まえると、相関係数こそマイナスの値しか出ていないとはいえ、アベレージの高さを鑑みるに、特定の相手に強いというよりも基本的なパフォーマンスが高く、一部の不利マッチを回避できれば好成績を狙いやすいデッキだったという評価ができるのではないでしょうか。

 

b) 採用カードの影響

 それでは続いてアグロエルフのパフォーマンスに影響を与えるカードがあったかどうか調べてみましょう。

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こちらも環境の影響を見た際と同様の統計手法による、分析結果の表となっています。

先ほどと異なっているのは、スコアがデッキリスト一つ一つについている(=スコア0で勝率50%になるような調整を行っていない)点で、そのためスコアの範囲がデッキタイプの平均を見ていた時よりも広くなっています。具体的には、デッキタイプごとの平均スコアはおおよそ-2~2あたり(外れ値があるともっと大きな値になることもあります)の連続した範囲にあるあらゆる数値を取りえたのに対して、リストごとのスコアは必ず1, 2, 4, 8, 16の5値のうちの一つを取ります。

 

分析対象としたのは、援護射撃ロイヤルの基盤がおおむね固まったことで、環境の主要デッキとその基本構築が出揃ったと判断できる4/18以降の予選で使用されたアグロエルフのリスト525本です。

アグロエルフのリストごとのスコアを目的変数、採用されている各カードの枚数を説明変数とした重回帰分析を行っています(変数選択は減少法)(以下同様)。

 

これによれば、イピリア, インセクトキング, ティートル・ディ&ダム, スターリーエルフ, 森荒らしへの報い という5種類のカードがアグロエルフのスコア向上に明確に寄与していたと言うことができます(並びの順番は寄与度の高い順)。ただ、ここでもいくつか注意が必要な点があります。

 

まずは確定採用(不採用)枠についてです。この手の分析は、あるカードの採用枚数が変化したときのスコア変化に特定の傾向が出ているかを調べるものなので、ほぼすべてのリストで採用枚数が同じカードに関しては、比較対象がないということで正確な分析ができません。

そのため「確定枠で3枚採用が通説となっているカードの枚数を減らしてもいいのか(減らすべきか)」「まったく採用例を見ないあるカードがそのデッキに向いているのかどうか」といったことの検証は困難で、分析対象は基本的には自由枠であったり、採用枚数に個人差が見られるカードに限られています。

 

また、最適枚数が分かるわけではない点も要注意となります。今回の分析手法は「Aが増えたらBも増えやすい」などの一貫した傾向を調べるためのものなので、「0~2枚では採用枚数に応じてスコアが上がるが、3枚目を採用すると少しスコアが落ちる」といったカードは、スコアの落ち幅によっては見逃すことになってしまいます。

上記2点から、表に現れたカードは確かにスコアに影響しているものの他のカードが影響していないというわけではなく、40枚という枠の中で表に現れていないカードを優先したほうがいい結果を出しやすくなる可能性もある、ということを念頭に置いて表を見ていく必要があります。

 

さて、ずいぶんと長く予防線を張りましたが、表に現れたカード5種を見る限り、アグロエルフにとって、盤面維持・プレイ数の安定供給が重要視される環境だったと見ることが出来そうです。

イピリアはどちらにも当てはまりませんが、40枚の総パワーで明らかに他デッキに劣るアグロエルフが山の上10~15枚ほどで20点のライフを詰め切るというゲームプラン上、欠かすことができないカードだったということでしょう。

総じて、PPやドロー枚数が低く限られている条件下で、自分の行動を最大化しやすいカードが勝利に貢献していた可能性が高く、前項で見た「特定の相手に強いというよりも基本的なパフォーマンスが高い」という傾向にも合致しそうです。

 

ちなみに、冒頭でアグロエルフはブレ幅が大きいというニュアンスの発言をしましたが、そのブレ幅が何に起因しているのか、若干ではありますが分析することができます。

デッキのブレ幅 = パフォーマンスの乱れ というのは大別すれば

  • 環境依存度
  • ドロー, 効果のランダム性依存度
  • プレイ依存度
  • 構築依存度

によって形成されている部分が大きいかと思います。ドロー, 効果のランダム性というのは構築に一端があるので、全くの別物として扱うわけにもいきませんが、ドロー等の絡まない採用カード選択であってもデッキのブレ幅に影響を与えることはあるため、敢えて分けて記しています。

これらのうち、プレイ依存度や構築依存度に関しては、プレイヤー個人が改善を図れる箇所であり、環境依存度に関しても、環境動向の理解次第ではそのブレ幅を緩和できる可能性があります。つまり、ブレ幅を「運」の一言で片付けずにもう少し掘り下げることができれば、デッキ選択の幅を広げたり、ひいては勝率そのものを上げられる場合もあるのではないでしょうか。

 

さて、このうちの環境依存度と構築依存度については a) b) でそれぞれ見てきた表である程度定量化されています。プレイ依存度については残念ながら明示的な評価を下すことは難しいですが、ドロー, 効果のランダム性依存度については1ゲームあたりの平均ドロー枚数や、採用カードの効果のランダム性などから掴みやすいかと思います。

 

例えばアグロエルフの場合、ロイヤル・教会ビショップ・ニュートラルウィッチの3タイプから成績面で影響を受けていました。中でも一番影響が強い(係数の絶対値が大きい)のは教会ビショップですが、教会ビショップは一度数を減らしてからは大きな使用数の変動が見受けられないので、アグロエルフの環境依存度は比較的低いと言えそうです(教会ビショップの使用数が定まらない環境が続いていれば依存度が高いということになります)。

一方、採用カードでは5種類のカードから明確に影響を受けていました。一般に14~16種類ほどのカードでデッキを構築することが多い中、5種類という数は軽視できず、構築依存度は環境依存度に比べて高かったのではないかと推測できます。

また、アグロデッキの特性上ドロー枚数は極めて少なく、インセクトキングなどのランダム効果を有するカードを採用することから、ドロー, 効果のランダム性依存度も高めと判断していいでしょう。

 

このようにしてみると、アグロエルフのブレ幅には構築面での差が潜んでいる可能性がうかがえ、採用カードや枚数比を細かく吟味することで安定感を高められるのでは、との発想も出てくるかもしれません。

 

(2) ミッドレンジエルフ(平均スコア : -0.19, 標準偏差 : 0.66)

前述のとおり、ミッドレンジエルフというデッキタイプは今回の分類の中で、最もふわっとした括りになっており、採用カードのバリエーションが極めて豊富です。

おおむね茨の森ジャングルの守護者を中心とした構成で、新弾実装直後から4月上旬にかけてはフェアリードラゴンユグドラシル、4月中旬以降はキングエレファント、そして5月中旬には妖精の使役者……というように第二フィニッシャー枠の選択傾向が変化していった形になります。妖精の使役者を採用しているタイプでは基本的に妖精の調べも同時採用されており、序盤~中盤のボード形成への注力度が特に高いため、前者2つとは少し毛色の違うリストと言えるでしょう。

このように調整の幅が広いデッキタイプですが、アグロエルフと入れ替わるような使用数推移は、アグロエルフメタの役割を期待されていたことの表れでしょうか。

 

ちなみに、妖精の使役者の採否によってテンポ重視・コントロール重視と便宜上分類を細かくした場合、テンポ重視のタイプは平均スコアが 0.42、コントロール重視のタイプは平均スコアが -0.23 となりました。

これだけ見ると使役者採用型の成績はアグロエルフを上回るレベルですが、母数が150ほどしかなく、スコアのばらつきも多いため、欲を言えばもう少しデータが欲しかったところです。

 

a) 環境の影響 

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 ということで、ミッドレンジエルフのスコアと他デッキの使用数の関係性を調べた分析表です。アグロエルフと同様の理由(援護射撃ロイヤルの構築基盤形成)で、分析対象は4/18実施の予選大会以降となっています。表を見るうえでの注意点等には既に触れたので、ここからはサクサク中身を見ていきましょう。

  • 教会ビショップ, ロイヤルの使用数が増えるとスコアが伸びやすい
  • 係数は軒並みプラス

と、アグロエルフとほぼ真逆の傾向が出ています。平均スコアが低めであることを考慮すれば、係数がすべてプラスとなっているのは「基本的なパフォーマンスには不安があるものの明確に苦手な環境は形成されにくく、仮想敵が多数存在する環境では好成績を期待できる」ことの示唆であると言えそうです。

アグロエルフ ⇔ ミッドレンジエルフ間の直接的なスコアへの作用は見られませんが、このように環境への適性が真逆であることを踏まえると、先ほど触れた「アグロエルフと対称的な使用数推移」にも一定の納得感が持てますね。

 

ロイヤルの使用数が増えるとスコアが上がりやすい、という点に違和感を覚えるかたも少なくないかもしれませんが、ロイヤル側の失着に助けられているケースが予想よりも多いのでは?ということ以外に、「対ロイヤル不利だとしてもそれ以上の対ネメシス有利があり、ネメシスが対ロイヤル有利のため、ロイヤルが多い環境ではラウンドを重ねるごとにネメシスとのマッチが増えやすく、間接的にミッドレンジエルフのスコアが上がる」という仮説も考えられます。

教会ビショップとの関係性については、ミッドレンジエルフに中~大型守護が多いことや、体力の高いフォロワーが出やすいビショップに対して、悪魔のドレスが機能しやすいことから、直接的な相性面で優勢に立っているとの見方でさほど問題はなさそうです。

 

b) 採用カードの影響

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 まずは妖精の使役者不採用型のミッドレンジエルフのスコアに影響を与えていた採用カード群を見てみましょう(一応採用カードの影響比較では、使役者の採否で区切ることができました……)。

 

クリスタリア・エリンインセクトキングに関しては順当といったところでしょうか。盤面重視の環境が続いていたため、やはり相手の場に即座にかつ強力に干渉できるカードの価値が高かった様子がうかがえます。

ロキについては搭載しているリストのほとんどが1枚採用なので、実質的には採用すべきか否かの判断材料として数字を見ることになりますが、係数を見る限りでは、このデッキタイプの課題である打点の稼ぎにくさをカバーするカードとして有効に機能していたようです。今回のファイナリストであるNineVoice選手、麩菓子/Tier0選手の両名も採用しており、採用カードの選択肢としてはかなり有力だったように思います。

縁の下の力持ちともいえる現れ方をしたのがフェアリーウィスパラー。実は使役者不採用型での平均採用枚数は約 0.9 と、枠の都合か追いやられていた様子が見て取れますが、採用枚数が多い構築のほうがスコアが出やすいという統計結果になっています。単体のカードパワーよりも、カシオペア収穫祭インセクトキングなど他種のキーカードをサポートすることが重要だったのでしょうか。

 

ちなみにこの表ですが、これまでに提示してきたものに比べるとやや統計的信憑性に劣る結果となっており、まるで出鱈目な傾向をはじき出している可能性もあります。悪しからず……。どういうことか気になるかたは「回帰分析 有意」「回帰分析 P値」あたりでググってみてください。

 

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 続いて、こちらが妖精の使役者採用型のミッドレンジエルフのスコアに影響を与えていた採用カード群です。

 

プラスに作用しているカードが妖精の使役者愛の妖精・ポーラ、マイナスに作用しているカードが森荒らしへの報い, リーフマン, ヴィーナス となっています。

通常のアグロエルフと異なりジャングルの守護者を採用しているデッキタイプであるわけですが、この表からは妖精の使役者を採用する時点で、あまりロングゲームに重点を置かないことが望ましい様子がうかがえます。

妖精の使役者自体についても顕著な傾向が出ており、採用するなら投入枚数が多いほど結果が出やすくなっている模様です。

 

こうしてみるとやはりアグロエルフのマイナーチェンジとも取れる構築ですが、アグロエルフで基盤を担っているリーフマンや、その成績向上に寄与していた森荒らしへの報いがこちらでは足を引っ張る形となっています。

考えられる理由としては、大魔法の妖精・リラカシオペアクリスタリア・エリンといった除去性能の高いカードの存在でしょうか。上記表には直接現れてはいませんが、いずれも平均して2枚以上の採用が見られます。これらのカードが森荒らしへの報いの役割をある程度代替する一方、コスト面から展開量が落ちることでリーフマンのバリュー低下につながっているような印象を受けます。

 

アグロエルフと同程度のブレ幅が出ているミッドレンジエルフですが、以上を見てみると、妖精の使役者の採否によらず、こちらも構築によって成績の幅が出ている可能性が浮上しています。スコア面で3つのデッキタイプから影響を受けやすく、中でも教会ビショップからの影響が大きめである点などまでアグロエルフと同様ですが、ドロー枚数ではミッドレンジエルフのほうが数段多いです。

すなわちドロー, 効果のランダム性依存度はミッドレンジエルフのほうが比較的低いと考えられる分、残る3種類の要素(環境・プレイ・構築)のいずれかの影響がアグロエルフに比べて大きいのではないかとの仮説が立ちやすく、更に分析を深掘りしてどこに力を注ぐべきか考えていく起点にできそうです。今回はひとまず各デッキタイプの俯瞰をしているので、あまり踏み込みすぎて帰ってこれなくなることは避けようと思います……。

 

3-2. ロイヤル

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今度はロイヤルについて見ていきましょう。

 

ロイヤルは環境初期から5月上旬まで、1か月以上にわたってミッドレンジロイヤルが最大勢力を形成していました。

既に触れたとおり、5月の頭頃から援護射撃入りの構築が急増し始め、瞬く間に使用数の逆転が起きています。ちょうどRAGE西日本予選の直前の出来事であったため、ロイヤルを持ち込んだ人の中には、ミラーマッチに苦しんだかたも少なくないかもしれません。一方で東日本予選までには使用数という意味での趨勢はすでに決しており、ミラーマッチではプレイ以外にも、より細かい調整内容での勝負が求められたと言えるでしょう。

 

他に潜伏を絡めたアグロロイヤルも環境初期でこそ一定数存在しましたが、アグロエルフの流行とともに次第に数を減らしていき、集計期間終盤では絶滅危惧種といった具合でした。

 

以下ではアグロを除く2タイプについて、個別に見ていきます。

 

(1) ミッドレンジロイヤル(平均スコア : 0.13, 標準偏差 : 0.53)

アベレージや傾向に明確な差があったため、同じ騎士王・アーサーを基盤とする構築でも、援護射撃の有無によって分類を変えています。ミッドレンジロイヤルは援護射撃不採用の型です。

平均スコアは若干のプラス値ということで大人しめですが、援護射撃型大流行の煽りを受けた5月中旬以降の成績大暴落を除けば、記載のものより平均スコアは上がり、標準偏差は小さくなります。

言うなればアグロエルフに比肩するアベレージと、トップクラスのブレ幅の小ささを誇るデッキタイプであり、プレイに自信があり、安定感を重視するプレイヤーに好まれたのではないでしょうか。援護射撃ロイヤルの増加により大幅に成績を落とした要因については後述します。

 

a) 環境の影響 

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この表もそろそろおなじみでしょうか。ミッドレンジロイヤルが活躍しやすい環境・しにくい環境について整理してみます。

ミッドレンジロイヤル vs ニュートラルウィッチのマッチアップはSNS上でもなかなかに意見が分かれていた印象を受けますが、JCG予選ではかなり明確にニュートラルウィッチに軍配が上がっていたようです(ニュートラルウィッチはいわゆる3竦みのような相性関係にある可能性が低く、ニュートラルウィッチの増加によりミッドレンジロイヤルの仮想敵が減少するといった間接的な影響は考えにくいため、直接のマッチアップ相性が大きく現れていると考えられる)。

若き鬼狩人・モモの平均採用枚数が 1を下回っており、呼び覚まされし禁忌や大型ニュートラルフォロワーへの対処に難儀したプレイヤーが多いものと思われます。

 

傾向そのものを俯瞰してみると、こちらもアグロエルフ同様、係数が軒並みマイナスのパターンとなっています。アベレージが高めであることも踏まえれば、このデッキも基本的なパフォーマンスの高さを活かし、不利マッチ以外を丁寧に押さえていく役割を担っていたようです。

ただし、不利マッチの中に援護射撃ロイヤルとアーティファクトネメシスという使用数二大巨頭を抱えてしまっている点はアグロエルフと異なっており、両デッキへの耐性をどのように獲得するのかが一つの課題だったと言うことが出来そうです。

 

b) 採用カードの影響

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続いて採用カードについての分析ですが、非常にシンプルな結果となっています。

バルバロッサ3

これだけでした。強いて言えば、嵐の槍使いの枚数もプラスに影響している気配がありましたが、もとの採用枚数にほとんど差がないうえに、統計的にもやや信憑性に不安が残る結果で、実質的にカード単体で成績に影響を及ぼしていたと断言できるのはバルバロッサだけでした。

 

もちろん、採用枚数の微調整や他のカードとの組み合わせといった特定の条件下で真価を発揮するものについては、この表からうかがい知ることはできません。

とはいえ、一時議論を呼んだ円卓の騎士・ガウェイン先陣の騎兵も、スカイフォートレスでさえも、バルバロッサに比べれば単体での成績への影響はないに等しいということのようです……(スカイフォートレスに関してははほぼすべてのリストで2枚以上積まれているので、抜いていいというわけではなく、2枚か3枚かではっきりとした差がついていないということです)。

 

デッキのブレ幅についての考察ですが、構築依存度に関してはたった今見たとおり、かなり小さそうです。

また、a) の表を見る限りでは多くのデッキタイプの使用数から影響を受けていそうですが、いずれも係数がそれほど大きくありません。最も係数の絶対値が大きいネメシスにしても、使用数の変動自体はさほど激しくなかったため、見かけほどの環境依存度はないかもしれません。寧ろ使用数の変動が大きかったという点では、係数こそ小さいものの援護射撃ロイヤルの存在が影響としては大きかったことが伺え、成績の低迷とブレが大きくなった時期も、その可能性を裏付けている印象を受けます。

これらのことから、もともとブレ幅の小さいデッキであったものの、援護射撃ロイヤルという潜在的な環境依存を抱えており、5月に入ってからそれが成績のブレとして顕在化したと捉えることができそうです。

 

(2) 援護射撃ロイヤル(平均スコア : 0.68, 標準偏差 : 0.85)

今回、援護射撃を1枚でも採用している構築は援護射撃ロイヤルとして分類しています。通常のミッドレンジロイヤルの基盤から1枚だけ援護射撃に差し替えるという調整は非常に珍しく、多くのリストでは、1枚でも援護射撃を採用した時点で他1~3種類ほどの採用カード・枚数に変化が生じているためこのような線引きとなっています。

 

構築の雛型自体は4月中旬頃に形成され、ゴールデンウィークに行われたプロリーグ開幕戦以降、爆発的な使用数増加とともに研究も進んでいったようです。

ゲームメイクが複雑になるためか、やはりブレ幅の大きさが目立ちますが、アベレージの高さも群を抜いて高く、非常にパフォーマンスの高いデッキだったと言うことができます。 

 

a) 環境の影響

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それでは環境の影響を見てみましょう。

  • ミッドレンジロイヤル, ミッドレンジエルフの増加に伴い成績が上がりやすい
  • 教会ビショップの増加に伴い成績が下がりやすい

援護射撃不採用のミッドレンジロイヤルに比べて随分とシンプルになりました。

明確にプラスに働くデッキタイプと明確にマイナスに働くデッキタイプがそれぞれ少数存在する形です。集計期間序盤を除けば、ミッドレンジロイヤルやミッドレンジエルフの使用数の多さに対して、教会ビショップがさほど多くなかったことを考えると、環境的には終始追い風が吹いていたと考えられます。

 

アベレージも考慮すれば「比較的環境の影響を受けにくく、パフォーマンスが高いデッキ」との見方ができますが、一方でもし一部デッキ(ミッドレンジロイヤル・ミッドレンジエルフ)が環境から減少すれば顕著に失速するリスクも抱えていたと言えそうです。このデッキにしても、環境依存によるブレを被る下地はあったということですね。

事実、5月のミッドレンジロイヤル減少に伴いスコアにも陰りが見え、ミッドレンジエルフの増加に助けられて大幅な低下とはならなかった形跡が見て取れます。

 

b) 採用カードの影響

さて、援護射撃ロイヤルのスコアにはっきりと影響を与えていたカードですが、統計的に信頼できる結果を出すカードはありませんでした。

そう、バルバロッサの枚数も援護射撃の枚数も、デッキの成績に明確な影響は与えていないという何とも拍子抜けな結果です。

 

さすがに何も分からずじまいというのも気持ち悪いので、もう少し掘り下げてみました。

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こちらは援護射撃バルバロッサの採用枚数の組合せごとのデッキ数と平均スコアを示した表です。この表でいえば、例えば援護射撃バルバロッサをともに2枚採用しているデッキは集計期間(ここでは4/18以降)中に 247本あり、その平均スコアは 3.23だったということになります。ここでの平均スコアは勝率50%デッキの平均スコアとの差分を取っていないので、差分で見たいというかたは脳内で3.00を引いてやってください。

援護射撃ロイヤルという分類(= 援護射撃を1枚以上採用)はこの表では2行目以降に相当しています。さらっと眺めてみると、援護射撃の採用枚数が2枚の際には、バルバロッサの採用枚数に応じて平均スコアが単調増加している様子が伺えます。援護射撃3枚採用の場合も、バルバロッサ0枚採用のデッキ数が3と極端に少ないので例外と捉えるのであれば、バルバロッサ1~3枚の範囲においては同様の傾向を見て取れます。

 

問題なのが援護射撃1枚採用のケースです。バルバロッサ0枚、または3枚の該当デッキ数がともに非常に少ないのでそこを例外と捉えたとしても、一定数存在する1枚~2枚採用のデッキでは、1枚採用のデッキのほうが高い平均スコアを出しており、上で見た単調増加傾向に逆行しています。

ということで、援護射撃の枚数が1の場合を除けば、バルバロッサの採用枚数はデッキの成績にプラスに働いている可能性が高そうです。

 

援護射撃1枚採用のケースがこの傾向に当てはまらない理由としては、例えば「1ゲームの間に援護射撃を引いてくる確率はさほど高くなく、引く前からゲームプランに組み込むことが難しいため、枠の圧迫というデメリットのほうが強く出てしまう」などいくつか仮説も思い浮かびますが、推測に推測を重ねても実用性のある結論が出ないことは多々あるので、ここではあまり深追いしないことにします(正直、たまたまこういう分布になったという可能性も十分あります)。

 

では一方、援護射撃の枚数は本当にデッキの成績に影響していないのかというと、こちらは上の表から読み取りやすいでしょう。バルバロッサの採用枚数によらず、援護射撃が1枚増えるたびに成績が乱高下している様子がうかがえます。およそ規則性と言えるものが見当たらず、援護射撃に関してはやはりスコアへの影響力を持たないと見ることが出来そうです。

 

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もうひと押ししておきたいということで、4/18以降のミッドレンジロイヤルと援護射撃ロイヤルをひとまとめにした 1645デッキを分析してみたのがこちらの表です。

援護射撃に関しては統計的に全く信頼できない数値(P値というのが、ざっくり言えば全く関係がない確率を示しています。ここでは援護射撃のP値が0.76あり、76%の確率で全く関係ないということになります)が出ているので本来であれば表から除くのが正しい処理になるのですが、バルバロッサとの比較ということで今回はあえて載せています。

 

やはりこうして見ると、援護射撃の採否関わらず、バルバロッサ騎士王・アーサー基盤のロイヤルのスコアに対して好影響を与えていると捉えることができ、逆に援護射撃の採否及び採用枚数はほぼ関係ないことが分かります。

 

では、何故援護射撃ロイヤルのほうがミッドレンジロイヤルよりも明確に成績がいいのかという疑問が湧くかもしれませんが、ここまでくれば答えは単純です。

両者の間でバルバロッサの採用枚数が違う。これに尽きます。

ミッドレンジロイヤルにおけるバルバロッサの平均採用枚数が約 1.1であるのに対して、援護射撃ロイヤルにおけるバルバロッサの平均採用枚数は約 2.1でした。もちろん他にも、両デッキタイプの間で採用枚数に差が出ているカードはありますが、これほどはっきりと枚数に差が出ており、かつ統計的にもその枚数が成績に影響を及ぼしていると明らかになっているカードはバルバロッサのみです。ミラーマッチの優位に貢献するのはもちろん、どのマッチアップでも一定のパフォーマンスを発揮しやすい環境だったということでしょうか。

 

以上を踏まえ、「とりあえずバルバロッサ3」というのが前期におけるロイヤルの構築の出発点で、援護射撃ほか自由枠に相当するようなカード選択はそこからコンセプトに応じて調整していく……というのがロイヤルに関する個人的な所感です。RAGE東日本予選では援護射撃を切ってバルバロッサを3投したロイヤルも一定数活躍していたようなので、少なくともまるっきり外れというわけではないのかなと感じています。

個々のカードの採用枚数が勝率に与えている影響そのものは微々たるものなので、「バルバロッサ0~2枚だけど勝てた」という声はあって当然ですが、その場合わずかとはいえ、まだ構築面で勝率を上げる余地があったかもしれません。

 

 

ということで、バルバロッサを連呼して力尽きたので、続きは後編に回したいと思います(中編にならないことを祈っていてください)。

この稿にしても、かなり書き殴ってしまったのであとから加筆修正が入ると思います。

 

なお、分析に使ったデータはこちらからご覧いただけます(自分で分析した後のファイルなので割ととっ散らかっています)。

JCG_DBN_data - Google ドライブ

後編で使用する予定の表やグラフもありますので先に見ておきたいというかたもこちらからどうぞ。

見方等わからなければ気軽に質問よこしてください!